第4回ヤマハジュニアピアノコンクール ロマン楽器本選会 全体講評

昨日は台風24号が接近する中、第4回ヤマハジュニアピアノコンクール、ロマン楽器本選会にご参加、ご来場をいただきまして誠にありがとうございました。急遽、開催時間を早めたにも関わらず、皆さまのご理解とご協力のもと、最後まで無事に開催ができましたこと、心より感謝申し上げます。
本来であれば、終演後に審査員の先生方による全体講評、表彰状授与式を行う予定でしたが、安全を最優先し、残念ながら実施ができませんでした。間もなく、審査結果の発表をホームページ上で行わせていただきますが、その前に、審査員の先生2名から全体講評をいただきましたので掲載させていただきます。

岡部 佐恵子 先生

本日は出演者の皆様大変お疲れ様でございました。そして今日演奏するまで多大なるサポートをしてくださった出演者のご家族、そして先生方のご苦労に頭が下がる思いで、一日聴かせていただきました。

どの部門においても予選よりさらに磨きがかかった素敵な演奏を聴かせていただきました。総じて感じましたことは、今回の本選会は800席もある大ホールでの演奏、ということで音を豊かに響かせること、そのためによく耳で響きを聴くことと、指先のテクニックが非常に重要になると思いました。普段はどうしても自宅のお部屋での練習になりますが、頭の中で大ホールの1番後ろの席に向かって弾く、というイメージも持ちながら練習したり、または出来れば本番前に一度でもよいので少し広めの部屋のグランドピアノで練習する、ということもできれば、自戒の意味もこめて音作りの勉強になると感じました。

A部門
皆さま本番でも物怖じせずに堂々と弾かれている方が多いと感じました。無理して大きな音を出す必要はないですが、曲のイメージを掴んで、元気いっぱいの音、悲しい音、寂しい音、優しい音、、etc.
を表現できることが大切と感じました。あと、まだ指が小さいですが、ただ鍵盤に指をおろすのではなく、レガートの奏法とフレーズの読み方も小さい時から譜読みと合わせて勉強されていくとよいと思います。

B部門、C部門
自己表現ができるようになり、「この曲がとても好きです」と伝わってくる演奏が多く、素晴らしいことだと思いました。
曲が難しくなってくる分、譜読みも複雑になるので、楽譜をきちんと読みこむ、ということの重要性を強く感じました。音の長さ、休符を再確認された上、テンポ感の感じ方ももう一度見直されるとよいと思いました。二拍子、三拍子、四拍子、それぞれどのように感じて弾くのか、ピアノを弾かずに歌ってみてください。特に三拍子の曲の方はうまく乗りきれてない、という惜しいところをありました(強拍弱拍、3泊目に慌てないなど)。地味な事かと思いますが、基本となる基礎をこの時期にしっかり学ぶことが大切だと改めて思いました。

D部門
難しい曲を皆様非常によく勉強されていて甲乙つけがたかったです。中学生になると体の成長と共に音量も豊かになってきますので、美しい音色の作り方→音の響かせ方を指と耳と頭を使って作る、ということも大切になると感じました。「ピアノを歌わせる」ということは難しいけどとても大事なことですので、音の響かせ方と共に学んでいかれたらとら思いました。

最後になりましたが、審査には大変甲乙つけがたく、とても難しかったことを申し添えます。今日選ばれなかった方の中にも、素晴らしい演奏をされた方が沢山いらっしゃいます。結果にこだわらず、自分自身の音楽をさらに精進され、ピアノを通して彩り豊かな未来となりますよう、心よりお祈り申し上げます。

塩見 亮 先生

まずは、皆さま無事にご帰宅されましたでしょうか?そして、外を吹き荒れる猛烈な風の音を聴きながら、コンクールの結果も含めて不安な夜を過ごされたことと思いますが、どのような朝を迎えられましたでしょうか?

さて、この度は「第4回YJPCロマン楽器本選会」のご出演、おめでとうございました。また、この日を迎えるにあたり、お子様の努力と成長を支え、促し、お尻を叩いてこられた(本当に叩いちゃだめですけど)保護者の皆様、ご指導なさった先生方におかれましては、出演者の皆さまの立派な演奏を聴き、お感じになることも少なくなかったのでは?と思います。私自身、名称変更前のYPCから数えると12年もの間、審査を務めさせていただいておりまして、直前のアドバイスレッスンも含め、小さなピアニストたちの、音楽性の大きな向上と、お会いするたびに(文字通り)成長されていく様子を目に、耳にできることがこの時期の楽しみであり、また大きな喜びでもあります。今回もたくさんの感動をいただきました。

そして、このコンクールを一年の大きな目標として取り組まれる方が増え、年々レベルが向上していると強く感じました。それに伴い、自由曲とはいえ演奏時間の制約もある中、また準備期間の長さや成長のスピードや相性、「映えるかどうか」など、さまざまな要素を考慮された選曲にも、ご指導されている先生方の思いや傾向が見られ、こちらも興味深いです。

そんな、「あなたのための1曲」を携えて舞台に上がった皆さんの演奏はどれも本選と呼ぶにふさわしい素晴らしく、それぞれの個性や音楽が際立っておりました。欲を言うなら、音楽表現の要素を「フォルテの音の強さ」「テンポや動きの速さ」「弾き方」にばかり求めるのではなく、「ピアノの音色の幅」「休符や長い音の扱い」「切り方」を大切にする方が、さらに増えていくと良いなと感じました。「筋肉までもが喜ぶ達成感」よりも「思わずため息が漏れるような充足感」とでも言いましょうか。後者は、より音を聴くことと想像力を求められますが、皆さんの音楽に奥行きを生み、「大きなホール」「大きなピアノ」の響きを感じ、想像、表現する、「大きな助け」となってくれると思います。

今回の経験を持ち帰り、新たな音楽の魅力と難しさを発見しながら日々の練習に取り組まれて、身も心も成長された皆さんと、また来年、お会いできるのを楽しみにしております。

ありがとうございました。

岡部先生、塩見先生、本当にお疲れのところ、心のこもった講評をいただきましてありがとうございました。